プロジェクトと組織のタイプ

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プロジェクトと組織のタイプ

PMBOK®Guideでは様々なタイプのプロジェクト組織を紹介していますが、その中で特に重要なもの3つをご紹介します。

機能型組織

形態

機能型組織は、機能、つまり仕事の内容により部門が分かれている組織です。プロジェクトは機能部門の中で完結し部門をまたがるプロジェクトはありません

権限

営業する人々は営業部、総務の仕事をする人々は総務部、情報システムに関連する仕事をする人たちは情報システム部と言うような機能部門の中でプロジェクトチームは完結していますですから、プロジェクト・マネジャーの権限は部門長(機能部門マネジャー)の権限より低くなります

問題点

機能型組織では、一つの部門の中に複数のプロジェクトが展開されている場合があります。このような場合、限られた資源が競合するという問題が起こります。例えば、部門の限られたヒトやモノなど資源の中でメンバーや作業場所の取り合いが起こるなどです。エスカレートするとプロジェクトの優先順位に関する争いに発展してしまう場合もあります。

マトリックス型組織

形態

マトリックス型組織は、機能部門横断的なプロジェクトを行う組織です。マトリックスという言葉は縦横という意味を持つ英語で、営業部から何人、総務部から何人、情報システムから何人というように、各機能部門から人々が集まってプロジェクトを構成しています。

この中でもプロジェクトのウェイトが高い場合は強いマトリックス型の組織とよばれなす。この場合プロジェクトのメンバーは、仕事の時間をほとんどプロジェクトの方に費やしています。

プロジェクトのウェイトが低い場合は弱いマトリックス型の組織とよばれます。この場合はプロジェクトのメンバーは、仕事の時間をほとんど自分の所属する部門に費やし、少しだけプロジェクトに従事します。

プロジェクトと部門の仕事のウエイトが半々の場合はバランス・マトリックス型の組織と呼ばれます。

弱いマトリックス型組織の中には、コーディネーター型プロジェクト・マネジャーとエクスペディター型プロジェクト・マネジャーがあります。
コーディネーター型プロジェクト・マネージャーは、上位者に直接管轄されてプロジェクトを行います。社長特別プロジェクト、社長直轄プロジェクトなどをイメージするとよいでしょう。
エクスペディター型プロジェクト・マネージャーは、部門長(機能部門マネジャー)と同じようなレベルの人材ですが直属の部下は持たずマトリックス型のプロジェクトメンバーの支援をします。日本の会社では役職定年後に、調査役などという肩書で直接の部下は持たず、限定された勉強会やイベントなどでチームのアドバイスや手伝いなどを行っている方々のイメージです。

権限

(プロジェクト型>)強いマトリックス型>バランス・マトリックス型>弱いマトリックス型(>機能型)の順にプロジェクト・マネジャーの権限が弱くなります。バランス・マトリックス型の部門長(機能部門マネジャー)とプロジェクト・マネジャーの権限は対等です。

☞(リンク)『マ トリ ッ ク ス 組織 に お け る PM の 役割 と責任』IBM遠藤雄,2005年PM学会発表→PMの経験による参考事例研究

☞(リンク)参考事例研究 神戸市立中央病におけるマトリックス型組織の医療IT情報技師育成『医療現場におけるITプロジェクトと組織育成』医療情報学会誌2006年

☞(リンク)参考事例研究 マトリックス型が多い日立製作所『総合電機企業におけるプロジェクトマネジメント教育の取り組み』岡本和彦・長島重夫, 工学教育2006年

☞(リンク)参考研究 発注者側は機能型、受注者側はプロジェクト型が多いITプロジェクトにおいて、要件定義時は、発注者マトリックス型・受注者プロジェクト型、実施段階時は、発注者プロジェクト型・受注者マトリックス型を提案『情報システムプロジェクトのマネージングメカニズム -多層構造のマネジメントサイクルの構想 』小松昭英 , OA学会情報経営学会合同研究会2006年発表

☞(リンク)参考意見 PMに必要なスキル『強いマトリックス型組織を支えるプロジェクトマネジメント』神庭弘年,プロジェクトマネジメント学会2009年発表

☞(リンク)参考研究 マトリックス型組織に起因するストレスの原因や課題への対応も含む『プラント建設プロジェクト遂行を成功させるリカバリー力強化のための施策の研究』阿部和秀,高野研一2015

参考研究 マトリックス組織での手法開発とPBLへの応用『組織横断的問題解決および日程計画作成の方式とそのプロジェクト型教育への応用』除村健俊,芝浦工業大学2018年

問題点

マトリックス型組織のプロジェクトは部門長(機能部門マネジャー)とプロジェクト・マネジャー二人のマネージャーがいることになりますですから権限が対立する可能性があります。特にバランスマトリックス型の場合は部門長(機能部門マネジャー)とプロジェクト・マネージャーの権限が同等なので、役割や権限を明確にしておかなければメンバーが混乱します。ちなみにメンバーが両方のマネージャーに報告しなければいけない状況を二重の報告関係と言います。

プロジェクト型組織

形態

プロジェクト型組織の場合は組織の中に機能部門がありません。事務局などを除き、組織のほとんどはプロジェクトで構成されています

権限

このようなタイプの組織には機能部門がありませんから、当然部門長(機能マネジャー)がおらず、プロジェクト・マネジャーの権限は、上記をあわせた三つの組織の中では最も高くなります

問題点

プロジェクト型組織のプロジェクトには、プロジェクトの後半で 生産性が下がるという問題点があります。
一般にプロジェクトの後半は中盤より作業量が少なくなるという傾向にあります。ですから、プロジェクトの中盤に所属していたメンバーが最終段階まで所属していると一人当たりの作業量が減ることになります。
マトリックス型や機能型のプロジェクトの場合はメンバーはプロジェクト以外にも機能部門に所属しているので、もしプロジェクトでの作業が少なくなったとしても所属部門の作業を行うことができ生産性は下がりません。このような問題を回避するために離任基準を明確にしておくことが望まれます。離任基準は資源マネジメント計画書に記載します

 

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